素敵なこの人

風景画を描く場所はどのように選ぶのですか?

犬の散歩で毎日通る道や幼い頃から馴染みのある場所など、普段見ている風景を描いています。生野町も人口が減り、空き家や更地が増えてどんどん町の様子が変わっているんです。風景画を描くうち、今の町の姿を後世に残していきたいという想いを抱くようになりました。生野には絵になる場所がたくさんあって、まだまだ描き切れません。

 
散策しながら気に入った景色に出合えばすかさず写真に収める。描いた時のことをイメージしながら構図を決めていく。
 

現在、取り組んでいることは?

生野が素敵な町だということをいろんな人に知ってもらいたいので、近隣の飲食店や関西のギャラリーを回ったり、SNSを活用したりと積極的に発信しています。地元だけでなく、東京での展示会やイベントにも出展したことで、たくさんの方に知ってもらえました。ありがたいことに風景画のオーダーをいただいているほか、来春までに展示会がたくさん決まっています。その中の一つで、全国の鉄道絵画展を地元の美術館で主催する予定です。というのも、生野を走っている鉄道は赤字路線で廃線の危機に瀕しているため、絵に描いて沿線の魅力を伝えるのが画家として私にできることだと思っています。

個展会場にて
4月に開催した個展会場にて。愛犬との散歩道を描いたお気に入りの作品「木漏れ日」。


個展の会場「町家cafe伍右衛門」
個展の会場となったのは、朝来市にある古民家を改装した「町家cafe伍右衛門」。

生野での生活はいかがですか?

今は絵を描きながら但馬地域の情報発信サイトでライターやカメラマンもしています。ほかにも朝来市吹奏楽団のメンバーとしてサックスを演奏したり、クラブハウスでのジャズセッションにも意欲的に参加したりしています。いろんなことをしていますが、中でも毎日精を出しているのは家庭菜園ですね。自宅の畑でたくさんの野菜を作っているんですが、なかなか好評で地元の人や都市部の友人が買ってくれます。Uターンする前は田舎での暮らしに不安もありましたが、今はここでしかできないことを目一杯できているという実感があります。創作活動や展覧会で東京や大阪へ行くこともありますが、どこにいても気持ちはいつも生野にありますね。

 

■ 松本さんが描いた作品の一部

「季節の通り道」
「小さな春のマルシェ」
「導き」
「駅前の賑わい」

■ 取材を終えて

鮮やかなワンピース姿で待ち合わせ場所に現れた松本さん。「今朝も畑仕事をしてきたんです」と軽やかに笑いながら、生野町内をくまなく案内してくれました。足場の悪い河原へと慣れた様子で降りていく松本さんの後を必死で追うと、そこに現れたのは圧巻の景色。「きらら」という作品に描かれたその場所は確かになんとも不思議な光景で、昭和の時代からぴたりと時が止まっているかのようでした。
絵を描くだけでなく音楽活動や畑仕事までマルチにこなし、やりたいことがまだまだあると話す松本さんの若さ漲るパワーにも圧倒されました。

■ プロフィール

1993年生まれ。朝来市生野町出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。大阪で就職し、4年前にUターン。地元の印刷会社でグラフィックデザインの仕事をする傍ら、アクリル画を描き始める。現在はフリーランスでデザインやイラストの仕事をしながら、画家として活躍中。4月には地元で個展を開催したほか、アジア最大級のアートイベントである東京デザインフェスタにも出展。6月には東京で日本中の風景画家が集結した風景画のみの展示会「日本の風景画展」を主催するなど、精力的に活動を展開している。

■ 連絡先
メールアドレス/

展示会の開催はSNSにて随時更新中。
ツイッター/@kasu_to_ru78
インスタグラム/@chika_matsumoto78

ウサギの団欒(だんらん